地域畜産振興部門

「おいしさと安心を届ける」都市養豚

消費地に立地した
「やまゆりポーク」生産活動


やまゆりポーク生産者協議会

地域の概要
活動目的と背景
活動の内容
活動の年次別推移
活動の成果・評価
普及にあたっての留意点
受益者等の声
 

■ 要旨

 1.高品質豚肉のブランド化

1981年に取り組んだ畜産振興事業団助成による「高品質豚肉生産事業」を基礎に生産農家3戸から始めた高品質豚肉の生産とブランド化は県内のAコープチェーン店を拠点に販売展開が進展した。生産者と系統農協は協力し、消費者ニーズにあった高品質豚肉の生産と、安定供給に努力し、銘柄豚肉「やまゆりポーク」として、1994年に「かながわブランド」の名称で認定された。1995年には「やまゆりポーク生産者協議会」を発足し、現在県内6農協に所属する13農場で、年間21,000頭と県内生産量の15%を占めるブランド豚肉として、安定的に出荷を行っている。県内での高品質豚肉のブランド化の取り組みでは「やまゆりポーク」は一番早く、取引価格をプレミアム販売(豚白上物市場価格の30円高での取引)に設定した。この販売方法は他のブランド豚肉のモデルとなり、生産コストの高い都市養豚の生き残り策となっている。

2.やまゆりポーク生産者協議会の活動

協議会を構成している13の農場は、小中規模経営が中心(母豚30〜350頭)で、年間9回の勉強会を行い、生産技術や環境対策についての意見交換や種豚の交流を図っている。

(豚肉品質を揃えるための種豚交流)

(1)独自の肉豚共進会開催による肥育技術の研鑽
定期的な肉豚の生体勉強会や協議会独自の肉豚共進会を開催し、種豚改良や肥育技術、豚肉の評価や選抜技術を全構成員が習得し、高品質肉豚生産技術の高度化を図っている。大型の食肉市場が主催する肉豚共進会やJA全農神奈川県本部が主催する肉豚共進会では常に上位を独占し、毎年、神奈川県養豚協会が主催する県全体の肉豚共進会でも、やまゆりポーク生産者協議会のメンバーが常に上位入賞し、今年度の共進会でも上位入賞するなど、高品質豚肉生産技術は最高の水準に達している。

(2)消費者ニーズの把握と「安全で安心な豚肉」供給の努力
食肉市場動向や消費者ニーズを把握するため、食肉市場の視察や取引状況の分析を行うと共に、販売促進のため販売店への訪問や消費者との交流(マーケットの広場での豚の体重当てクイズや豚肉試食などイベントの実施)を通じ、消費者ニーズの把握や生産者の顔の見える販売を心がけている。販売キャンペーンを行う時には店頭の販売員として、消費者とコミュケーションを図り、安心して購入頂ける良質豚肉生産の励みとしている。
消費者との交流を積極的に行うため、神奈川県養豚協会が主催する「かながわトントンまつり」(養豚農家と消費者の交流イベント:子豚とのふれあいや、豚肉料理教室、豚肉のバーベキュー、豚肉の即売などの催し)で、消費者や地域住民に豚肉や養豚業への理解を深める行事に積極的に参加している。

(3)「やまゆりポーク」の品質向上とブランド発展の努力
「やまゆりポーク」の生産が拡大し、ブランドの商標登録が取れてやまゆりポーク生産者協議会が正式に発足してから約10年が経過し、県内豚肉の高品質ブランドとして定着し、県外にも販路が拡大しつつある。これは、品種の構成をランドレース種、大ヨークシャー種、ヂュロック種の組み合わせとしグループ内の種豚流通により、血統の統一に努めている。また肉質を左右する飼料については、大麦を配合し、ビタミンを強化するなど、飼料を提供する全農神奈川と共同開発した専用飼料を利用するなど「やまゆりポーク生産マニアル」により、統一した高品質豚肉生産技術を常に改良し経営の安定を図ると供に、消費者に「やわらかくておいしい豚肉」と評価されるブランド豚肉が安定して徐々に拡大している。

(4)経営継続のための環境対応と後継者育成の努力
  都市の中の畜産は家畜排泄物法への対応施設や管理と共に、臭気対策も考慮した施設整備や管理が必要不可欠となっている。豚舎尿汚水は神奈川方式の活性汚泥浄化槽の利用や流域下水道の利用により処理し、豚ふんはコンポストや堆肥舎で堆肥化し、近隣の野菜生産農家に販売している。

【都市の中の養豚にかかる環境コスト】

コンポストから排出される高濃度のアンモニア臭気を活性汚泥浄化槽で処理する等、新たな環境対策に取り組む農家もあり「やまゆりポーク」生産の全養豚農家が都市の中で経営が持続出来るよう経営環境の保全に努力している。これらの環境コストや都市周辺の高い地価評価に基づく地代負担をプレミアム販売による売り上げ増が可能にし、収益増に繋げ都市周辺での持続的な養豚を可能とする多くの工夫が評価できる。
  また「やまゆりポーク」生産農家の多くは後継者が育ち、県内でもこのグループの若手が肉豚共進会で上位に入賞するなど、県内の養豚技術をリードするほどになった。都市化に伴う生産コストの増加を、都市の消費者に高品質高級豚肉として評価され直接販売出来るメリットを生かし克服する経営戦略は、県内養豚家の手本となっている。この経営戦略は都市の中の養豚として生き残れる勝ちパターンとして評価出来る。

 

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(社)神奈川県畜産会 2005