1.本県養鶏の動向

 畜産統計(農水省)によると、平成17年2月1日現在の本県における採卵鶏の成鶏飼養状況は飼養戸数89戸、飼養羽数1,453千羽となっており、経営者の高齢化や環境問題等で飼養戸数は5%、飼養羽数で3.5%と、緩やかではあるが戸数、羽数とも減少している。
 しかし、一方では後継者も育ち、有利な立地条件を活かして、都市と共存する意欲的な取組みも各地で見られている。
 これは870万県民を有する大消費地という好条件に立地する養鶏経営が、鶏卵の直販戦略を展開し、経営の向上を図っているからである。また、なかには装備の充実にあわせて、マ−ケティングリサ−チを積極的に行う経営が増加している。
 これらは、「都市養鶏」と呼ばれる比較的少羽数の中小規模ではあるが、専業化の形態で、都市と共存しながら多様な発展が期待されている。
 しかし、全国的に見ると、少数の超大規模経営がスケ−ルメリットで薄利を補おうとして、生産性の寡占化が進み、構造的な生産過剰の基調にあることは否めない。
 また、加工向けでは、一度液卵を利用すると価格の安さ、手軽さからリピーター化するため、液卵の輸入も増加傾向にあり、経営は厳しい状況である。
 平成17年度の鶏卵の国内生産量は、2,481,000トン(前年比99.6%)とやや前年を下回った値となった。また、輸入量は国内生産量の減少を補完する動きを示し、150,959トン(前年比112.6%)と、増加の傾向となっている。
 また、採卵用めすヒナのえ付け羽数は109,801千羽で、対前年比104.6%と増加に転じているので、今後の需給バランスに注意を払う必要がある。

 平成17年の卵価(図1)は、年間平均で204.4円/Kgで、対前年比117.6%となったが、この卵価はここ5年間で見られない高値の卵価であった。

2.診断農家成績の分析概要

(1)診断対象経営(農家)の概要

 平成17年度における畜産経営高度化促進事業の対象養鶏場は、経営診断に基づく改善指導が5戸、経営管理技術指導1戸、生産技術指導4戸、フォローアップ指導10戸の延べ20戸であった。
 対象農家の経営規模を平均飼養羽数で示すと、図2のとおりであり、2千羽台から約10万羽台であった。成鶏舎の形式は、開放鶏舎1戸、小型ウインドウレス鶏舎3戸、大型ウインドウレス鶏舎1戸であった。

 診断対象経営の労働力の構成をみると、自家労力のみの経営が2戸で、残りの3戸は雇用労力を用いた経営であった。
経営の常時従事者数は、3.0〜17.2人であり、小規模経営では家族労働を主体とした形態で堅実に営まれ、雇用労力の主体はパ−ト雇用であった。しかし、大規模経営では常勤の雇用人を活用している。
 経営形態からみると、野菜生産などとの複合経営が3戸で、他の2戸は養鶏の専業経営であった。これを経営組織からみると、個人経営が3戸、有限会社による経営が1戸、農事組合法人が1戸であった。

(2)施設利用と投下労力

ア.鶏舎の利用状況
 対象経営のケ−ジ利用率は図3に示したとおり、最高は90.1%、最低は51.5%、平均で64.7%となっており、指標値(86〜88%)を超える経営は1戸であった。かつてはスケールメリットを追求して規模拡大を進めていたが、中小規模の養鶏経営は、直販による有利な販売戦略に切り替えたため、適正飼養羽数に抑え、1羽当たりの鶏卵売上を高めて経営を安定させる傾向が強く、これが利用率を低くしている要因である。

イ.所要労力
 成鶏1羽当りの年間労働時間を図4に示した。最高は1羽当り3.06時間、最低は0.51時間で、その平均値は1.90時間となっているが、中小規模は大規模の2〜6倍程度の多い労働時間となっている。また、前年に比べて中小規模はやゝ労働時間が長くなっている。
 一般的には、小規模経営ほど労働時間がかかる傾向があるが、これは、3戸の小規模経営では自家販売率が高く、飼養管理のための機械化が少なく、鶏卵の処理と販売に多くの時間をかけているためで、その分1羽当たりの鶏卵売上高は高くなっている。
 これからの時代、労働時間の短縮が要求されており、養鶏に於いても「ゆとりある養鶏経営」の推進が必要である。このためには、自販機の活用、共同販売推進、ヘルパーの構築等種々の効率的な方向を考えていく必要がある。

(3)飼養鶏種と更新鶏の導入

ア.飼養鶏種
 診断対象の養鶏場が飼養する鶏種(銘柄)は白色卵系として、ジュリア、ジュリアライト及びシェ−バ−、褐色卵系として、ボリスブラウン及びもみじ(G-130)、中間色としてさくら(G-360)が飼養されており、大規模経営では白色系のみであるが、中小規模経営では有色卵系を主体に白色系も飼養されていた。
 この中小規模の経営は特殊卵や付加価値卵として、直販で販売されており、褐色卵系や中間色系が多く飼養されているのは、顧客のニーズを反映したものである。

イ.更新鶏の導入と強制換羽の状況
 更新鶏の導入状況は表1のとおりである。即ち2戸は初生導入、1戸は初生及び大雛の交互導入、他の2戸は大雛導入であった。また、更新鶏は年間2回から5回の導入(平均3.8回)のロットで構成されていた。粒先の平均化や需要に合わせた鶏卵生産量を確保するためロット数は増えるのが通常であるが、今回は減少している。この要因として、産卵調整技術の導入、鳥インフルエンザによる導入の混乱等が考えられる。
 大規模経営では少ないロット構成で強制換羽を実施し、小規模の2経営では強制換羽なしで飼養していた。

表1 更新鶏の導入状況
養 鶏 場ABCDE
導入回数44452
導入日齢120日齢初生、121日齢120日齢初生初生

(4)鶏卵の販売

 鶏卵の取引価格は、農協や問屋への出荷の場合は、全て新聞相場から経費を差し引いた価格で取引されている。直販主体の農場では庭先販売、食堂・加工業者・消費者への配達、宅配便等種々の形態に対応しているが、価格は売り手と買い手の相対取引となっている。
 その結果、診断対象養鶏場の平均卵価は328円と算定されたが、養鶏場ごとの平均販売卵価を見ると、172から417円の間にあり、概ね2.5倍の開きがみられた。
 新聞相場は平成17年1月〜12月の全農M級加重平均が204.4円で、この卵価はここ五年間で見られない高値の卵価であった。1月当初から平均で200円台の相場となり2月、3月は250円を超える卵価を示した。夏場は150円前後の相場となったが、後半持ち直し、久々に年間平均で200円を超す相場となった。
 このような状況で、直販(宅配を含む)を行っている養鶏場4戸の平均で367円とM加重の倍近い価格で販売しており、直販も卸価格の高値の恩恵で今までよりも50円程度高い販売卵価となった。経営によっては500円の卵価設定もあり、工夫と努力次第で非常に有利な経営の展開が可能なことが示唆される。
また、鶏卵の販売で興味のある方法として、余剰卵、傷玉、破卵を卵油とし、製品を無駄なく販売している例もあった。
 その具体的手段として、次のことが取り入れられている。
@特定栄養素等の飼料添加による差別化鶏卵・付加価値鶏卵の生産。
A立て看板あるいは折り込み広告、インタ−ネット利用等による自家生産鶏卵の積極的宣伝及び卵の有効利用として破卵、傷玉等の加工(例えば卵油)販売による増益。
B自動販売機等の庭先販売施設の整備、充実。
C鶏舎及び養鶏場周辺の整頓と美化による消費者の誘引。
D合理的な賞味期限の設定・表示など安全性のアピ−ルなど。
E農産物品評会などでの優秀賞の受賞掲示

(5)主な技術的指標からの分析

ア.育成率と成鶏損耗率
 診断対象養鶏場の更新鶏の導入日齢は表1に示すとおり同一ではないので、直接の比較は適当でないが、指標値(97〜100%)以上で、良好な成績であった。
 また、ひな育成の成否は将来の生産に大きく左右することから、育成環境を中心に飼養管理の一層の向上が望まれる。
 成鶏で、へい死鶏として記録されるものの中には、淘汰廃棄された駄鶏も含まれているのが通例であるので、へい死鶏と適宜淘汰鶏をまとめて損耗鶏として扱い、成鶏損耗率という概念で包括することとし、その成績を図5に示した。全体平均は4.8%であったが、養鶏場間の差は大きく、最高(11.4%)と最低(0.7%)で、大きな差があった。指標は12%以下となっているが、1農場を除いて指標よりかなり良い成績であった。
 損耗率が高いと生産の効率が低下することになり、育成費用の回収が出来ずに終わることになる。開放鶏舎では真夏の暑熱によるへい死、ウインドウレス鶏舎では停電事故等による大きな損耗を引き起こしかねないので、日頃の飼養管理での危機管理を見直しておくことが重要である。

イ.成鶏の更新率と淘汰率
 成鶏の更新率、淘汰率を図5に示した。両数値とも養鶏場間の差が大きく、この要因として、強制換羽の実施状況や淘汰方式の差によるものもあるが、鳥インフルエンザの影響で経営に対する不安に拠り、導入時期、回数の乱れによるものもある。
 強制換羽を実施すれば、成鶏の供用期間が長くなるから、当然、淘汰・更新とも低くなる。
 また、適宜淘汰の場合は、成鶏の供用期間が長期に亘る場合が多く、淘汰・更新率低下の要因となる。更新率の全体平均は86.9%であり、指標値93%より低い値となっている。個々農家の数値は59.4%〜129.6%と大きなバラツキとなっている。
また、淘汰率で最も高かったのは104%で、最低は54.3%であり、平均は80.9%で指標値に近い値であった。

ウ.成鶏飼料の消費量
 成鶏1日1羽当りの飼料消費量は図6に示すとおりで、消費量の最低は94.9g、最高は118.2gと、約24gの差の開きがあり、全体平均では103.0gとなったが、1農場を除いて指標値(110〜113g)より少ない消費量にとどまった。これには、最近の育種改良が飼料消費量の低減にシフトされており、その効果が現れているものと考えられる。
 飼料消費量は鶏種、産卵量、給与飼料の栄養水準、鶏舎の環境条件(暑さ、寒さ)及びエサ樋の形態(エサこぼれと密接な関係)等で影響される。最近の育種改良では飼料消費量の改善にウエイトが置かれており、改善は進んでいる。しかし、飼料費は生産コストに大きなウエイトを占める(図13)ので、飼養管理での飼料節減は重視すべき項目である。

エ.日産卵量
 図6に日産卵量を併せて示した。全体平均の48.7gは、指標値(49〜51g)の下限値よりやや低い値にあたる。農家間は42.2〜54.3gと約12gと大きな差となった。生産卵の全てを自家販売している養鶏場で低く、これは鶏卵処理と販売面に力が入り、飼養管理面に目が届かなくなっていると考えられる。
 また、時期的な鶏卵需給を見越して意図的な生産調整がなされているケースも見られる。

オ.飼料要求率
 近年、採卵鶏の性能と配合飼料の品質の向上とを反映して、飼料要求率はかなり改善がみられる。飼料要求率は、1.89〜2.80で、平均2.11であった。
 飼料要求率の良いところは、最適な鶏舎内環境コントロール、飼料の高栄養化、鶏種の選択、餌こぼれに注意等が大きく反映しているものと思われる。

(6)主な経済的指標の分析

ア.販売卵価と売上高
 診断対象養鶏場の鶏卵1kg当りの販売卵価は図8に示すように、養鶏場間に大きな差が認められた。最高(417円)と最低(172円)には2.5倍の開きが生じており、販売方法の違いが経営戦略の決め手であることを示唆されている。
 きめ細かな販売で消費者の多様性に対処することで付加価値を認めてもらい、高卵価を維持するよう努めることが肝要である。

 このような卵価に支えられた成鶏1羽当りの年間売上高も図8に示した。図に示すように鶏卵1kg当りの販売価格と近似した傾向となっており、販売価格が売上高と高い相関にあることを表している。

イ.飼料の購入価格と成鶏1羽当りの飼料費
 飼料の購入価格は取引先、取引条件(取引量、代金の支払条件、荷姿)、銘柄・品質によって、当然差が出る。特に取引量と価格とは負の相関関係にあり、大量取引では格段に安くなるのが常である。
 そのため、養鶏場間に較差が生じることとなり、成鶏飼料1kg当りの価格は、最高63.1円、最低38.1円、平均49.7円であった。総じて差別化鶏卵・付加価値卵を生産している経営では、高品質飼料(主として高蛋白飼料)の給与や、特殊な栄養成分を含む飼料を用いるため、成鶏飼料費が高くなる傾向にあった。
 飼料の購入価格は取引先、取引条件(取引量、代金の支払条件、荷姿)、銘柄・品質によって、当然差が出る。特に取引量と価格とは負の相関関係にあり、大量取引では格段と安くなるのが常である。
 これらの関係を成鶏1羽当り年間飼料費として整理すると、図9のように自家販売比率の高い小規模経営ほど高く、規模が大きく原料卵として農協や問屋の出荷が多い経営ほど安くなっている。

ウ.所得額と所得率
 年間所得額(家族の労働報酬)を成鶏1羽当りと、養鶏従事者1人当りとして図10に示した。成鶏1羽当りの所得額は最高3,004円、最低5,347円で、平均は673円であった。このように、経営間の較差に相当の開きが生じたのは、飼養羽数、ローテーション、飼料費、資本装備等と売上高とのバランスの良否が大きく関与している。
 ここにも図8に示した販売卵価及び売上高との関連が強くみられた。

 これらの状況を養鶏従事者1人1日当りの所得率の視点からまとめると図11のようになり、指標値でも経営の類型に応じて16〜33%と言う幅を持たせてはいるものの相当のバラツキが認められ、最高で50.4%、最低は40.0%となり、平均で20.0%となった。

(7) 生産原価の分析

ア.経営費と生産原価
 鶏卵1kgの経営費(自家労賃は含まない)と経営費から副産物収入(鶏ふん及び廃鶏等の売却収入)を差し引いて求めた生産原価の関係を図12に示した。平均では経営費が412.2円、生産原価が404.3円となり、その差は7.9円であった。
 図12の並立する棒グラフ間での差が大きいケースほど廃鶏と鶏ふんの収入が多い経営と言えるが、経営により副産物の販売が上手くいっているケースと、努力が必要な経営で差が出ている。
 特に、最近は、廃鶏収入を見込める例が少なくなり、むしろ逆に処理するのに廃鶏処理料を支払う例が多くなってきている。

 鶏卵1kg当りの経営費の構成内容は図13に示した。生産コストの大部分は、更新費、飼料費及び減価償却費で占めている。また、生産コストで最も大きなウエイトを占める飼料費についてみると、付加価値卵や差別化卵の販売に熱心な経営ほど多く嵩んでいた。また、減価償却費は施設機器の導入時期、導入数、投資額によってかなり異なってくる。平均で38.26円/kgとなったが、0〜107.1円と償却がほとんど終わった経営と、まだまだ頑張る必要がある経営と、千差万別であった。
 雇用費は飼養羽数が少なく自家労力で乗り切ろうとする経営では当然ながら少ないが、雇用費の平均は20.8円/kgであった。
 鶏卵の自家販売のウエイトが増すにつれ、包装費、宣伝費、宅配料、販売手数料のいわゆる販売費が増加している。対象農家の平均は13.74円であったが、このうち包装費にかなり経費をかけている例もあった。
 贈答等宅配による立派な包装等も必要であるが、最近はゴミを出さないように、且つ、包装費の節約を考え、品質を保持して安全に運搬できる放送の方向も今後の課題である。

3.診断農場別経営特徴と解析

A養鶏場

技術指標
 へい死率、破卵率は低いが、単位労働時間当たり日産卵量が低い。これは直販のため販売に要する時間が長いためと考えられる。

経営指標
 毎年設備の更新があり成鶏1羽当たりの投下資本が高く、このため、減価償却費も多くなり、経営の圧迫になっている。

収益性
 羽数が少なく、投下資本が高いため収益性は良くない。また、総収益が低いのは労賃が多いためである

B養鶏場

技術指標
 各項目指標値に近い数値を示しているが、単位労働時間当たり日産卵量が低くい。これは、販売に費やす時間が長いためと考えられる。破卵率、へい死率も低く、良好である。

経営指標
 借入金が無い健全経営である。固定資産投資が高く、償却費が高くなっている。

収益性
 羽数が少なく、生産費もかかっているため総収益は少ないが、1羽当たり所得額は指標の2.5倍と高い。

C養鶏場

技術指標
 各項目指標値に近い数値を示しているが、単位労働時間当たり日産卵量が低くい。これは、販売に費やす時間が長いためと考えられる。破卵率が、へい死廃棄率が低く、経営に寄与している。

経営指標
 借入金が無い健全経営である。投下資本が高いため償却も高く、経営を圧迫している。飼料費及び衛生費がやや高い。

収益性
 総所得額、所得率等は指標並の数値であるが、総収益は低くなっており、人件費がかさんでいるためである。

D養鶏場

技術指標
 単位労働時間当たり日産卵量がやや低くいが、直販を組み込んでいるためと考えられる。破卵率が低く、へい死淘汰も少なく、飼育管理に注意が払われている結果と思われる。

経営指標
 借入金が無く、投資額も少なく、健全経営である。衛生費がやや高いが、防疫に力が注がれている結果と考えられる。

収益性
 成鶏1羽当たり所得額が高く、総所は得良好であるが、総収益が低いのは人件費が多いためで、合理化が必要と思われる。

E養鶏場

技術指標
 単位労働時間当たり産卵量が高く、効率的な労働管理がされている。更新率、淘汰率が低いが産卵制御を導入している結果と考えられる。へい死が高いので鶏舎環境の適正なコントロールに努めることが肝要と考えられる。

経営指標
 借入金が無く、投下資本額も少なく、健全経営である。育成飼料費がやゝ高い。

収益性
 大規模養鶏で総所得額は高く、総収益も指標の約3倍と労働費の節約が見受けられ、合理的な経営がなされている。

4.指導の方向と対策

 平成17年は穏やかな正月で年が明けたが、春には茨城県で弱毒性ではあるが、高病原性鳥インフルエンザが発生し、600万羽の採卵鶏が淘汰され、終息宣言は平成18年になってからと、長きにわたり、養鶏業界に大きな影響を与える年であった。
 このような状況の中で、平成十七年に実施した診断対象経営について課題とその改善方向を次に列記した。

(1)鶏卵の品質と安全性の確保は最重要です

 鶏卵の安全性の確保は鶏卵生産販売にとって最も重要な事項である。鳥インフルエンザの発生以降、消費者の安全に対する目は厳しくなっている。食品衛生上の問題発生は、鶏卵の消費に致命的な打撃となる。経営者は鶏卵の品質と安全性について常に努力し、対策を講じた上で消費者を啓発し、顧客の確保に努めることが重要である。
 需給のバランスを取るため、飼養管理で産卵制御を取り入れることが多々ある。しかし、鶏にはかなりのストレスとなり、免疫機能の低下から悪玉菌の増殖が促進されることもある。此を緩和する産卵制御方式も提唱されている。新しい技術の取り入れも重要である。

(2)消費者ニーズへの適切な対応

 消費者は多様性であるため養鶏場としては付加価値卵、特殊卵等に対して絶えず新しい取組みが必要である。
 また、鶏卵の表示問題では公正取引委員会事務総局から鶏卵の表示の適正化に対する要望が生産者団体に出ており、適正表示が重要となっている。特に、付加価値卵については公正競争規約施行規則の定めに拠ることになる。この点直販養鶏場は消費者と直に接するため商品(鶏卵)の付加価値及び特殊性について、納得のいく説明をすることが出来るので有利な販売といえる。

(3)生産コストを意識する

 有利販売を展開している経営では、ともすれば生産性とかコストに対する意識や関心が希薄になる傾向がある。しかし、鶏の育種改良は常に進められており、能力にあった飼養管理が生産性向上とコスト低減へつながる重要な項目で、養鶏経営に於いては常に注意を払っておく必要がある。
 飼料摂取量は経営によってかなりの開きがあることから、給餌法を考えて飼養管理を行うことが重要である。飼料は100%近く輸入に頼っており、種々の要因から今後原料価格の上昇は避けられない状況と考えられる。

(4)鶏卵の生産量と販売量の調整による無駄のない経営

 全量を直販している経営では、時期によって需給にアンバランスが生じる。鶏のローテーションを上手に行って需給のバランスを合わせるのは至難の業といえる。このため、余剰卵の発生や販売卵の不足に苦慮しているケースが見られる。日頃から卸問屋やGPセンターとの取引の実績を作って、信頼関係にあることも一つの方策である。
 また、パソコン等の表計算を用いて、雛の導入調整(時期、羽数)と産卵制御の手法を用いた成鶏のローテーションを農場の実情に合わせてシミュレーションするのも経営を考える一助なる。
 余剰卵、破卵、傷玉卵を無駄なく加工(卵油)販売し、経営向上に努めている養鶏場もあり、販売の工夫は重要であると考えられる。

(5)畜産環境等について

 畜産環境3法も平成16年11月より施行され、畜産環境に対する一般の目は厳しくなってくると考えられる。一般的に都市部での畜産経営では、地域住民の生活に影響を及ぼす悪臭、騒音、ハエ等の発生防止について、かなり整備・改善されてきたが、更なる配慮が重要である。
 また、県下の養鶏場が点在的分布になったことと、ワクチンの開発・普及等によって鶏病の発生は減少している。しかし、近年は輸入卵等による鶏病浸入も一層危惧さる。一旦伝染病が発生すると甚大な被害となるので、鶏病の予防には万全を期して戴きたい。