1.本県養豚の動向

(1)平成11年2月1日現在の県内豚飼養状況は、畜産統計(農水省)によると飼養戸数130戸、頭数100,500頭で対前年比は戸数92.9%、頭数99.8%となり、戸数はやや減少傾向にあり、頭数はほぼ前年並みとなった。また、1戸当り平均飼養頭数は773頭と前年より51頭増となり全国平均789頭に近い頭数となった。
 一方、同2月1日現在の県畜産課調べによる子取り用雌豚飼養状況をみると、戸数115戸で9,668頭を飼養し、1戸平均84頭で前年平均より0.4頭増となった。

(2)平成10年の県内養豚農家の豚出荷頭数は223,026頭で、これは同年2月1日現在飼養頭数の2.2倍となる。また、県内豚と畜頭数は628,706頭で対前年比2%増となり県内出荷豚のと畜頭数割合は35.5%であった。

(3) 平成9年における豚肉の県内自給率(県内総消費量135.9千トンに占める県内生産量15.8千トン)は11.6%で前年同比となった。

(4)平成10年度の枝肉価格の動向については、国内生産が前年度を0.2%上回る90万4千トンとなり、輸入は台湾の口蹄疫等による混乱が落ち着きをみせ、関税の緊急措置(SG)の発動も無くほぼ需要に見合った輸入が行われた中で、東京食肉市場枝肉卸売価格(上)でみると枝肉kg当り年間平均価格は454円(前年比94.2%)となり、昨年度に引き続き前年平均を下回った。

(3)平成10年における豚肉の県内自給率(県内総消費量138.4千トンに占める県内生産量15.3千トン)は11.1%で前年比0.5%減となった。

(4)平成11年度の枝肉価格の動向については、国内生産が前年度を1.3%下回る89万2千トンとなり、東京食肉市場枝肉卸売価格(上)でみると枝肉kg当り年間平均価格は442円(前年比97.3%)となり、3年連続で前年平均を下回った。

2.診断農家成績の分析概要

 平成11年度における養豚部門の経営診断指導対象は、畜産経営技術高度化促進事業では経営診断改善指導対象5戸、担い手集中経営支援体制整備事業対象7戸、先進的経営調査対象3戸の中から総合的な分析に必要な数値が把握できた7事例について行った。成績は表1表2表3のとおりであるが、平成11年度改訂の本県畜産経営指標(養豚)に照らしながら経営成績の概要を述べる。

(1)経営の概況

(2)繁殖成績

 雄雌繁殖豚の候補をどう確保するか、その選抜眼と更新技術によって繁殖群本来の能力が左右される重要なポイントである。
 後継母豚の確保は自場生産豚で補っている例が多い、候補豚の生産は、どのような肉豚を作っていくべきかを念頭に、体型や肉量また種雄との交雑結果等を考慮し計画的に生産することが望ましい。
 雄豚については、優良遺伝子の導入、母豚の自場更新を補う血液更新の意味からも外部導入が積極的に行われている。雄豚一頭当りの母豚数は平均16.0頭(11.1〜18.1頭)で、これは自然交配(以下NS)か人工授精(以下AI)かによって異なる。
 AIを活用しているのは7例中4例であるが、利用方法は自家採取での100%AIまたはNS+AIから購入精液によるAIまたはNS+AIなど様々である。AI活用農場での雄豚保有頭数は15.1〜18.1頭の雌豚に対して1頭と以外に多いが、F1生産のための純粋雄豚(L・W)を抱えていることにも関係していると思われる。
 11腹当り生存子豚頭数は平均10.2頭(9.0〜11.1頭)で指標値の10.5頭を超えたのは7例中4例あったが、指標値にとどかない残りの3例は全て10頭以下の低い成績だった。最も生存産子数の少なかった事例は9.0頭と指標よりも1.5頭少なく、この事例は分娩時の損耗率が高く、1腹当り1.9頭(総産子数の17.4%)が死産もしくは虚弱死であり、季節ごとに応じた妊娠母豚の飼養管理(ボディーコントロール)がこれからの課題となっている。
 1腹当り離乳子豚頭数の平均は9.1頭で指標より0.5頭下回っているうえ7.8〜10.5頭とばらつきがあった。農家番号No.6は生存子豚数、離乳子豚数ともに最小値を示した。
 離乳子豚数は生存子豚数や育成率などによって大きく変動する。正常な飼育管理下における1腹当りの産子数は、母豚の品種構成や遺伝的資質によるところが大きく、これに交配時の発情状況(交配適期)と交配精液性状などが総合されたものであるため、人為的に増やすことは難しく、離乳子豚の増頭策としては分娩施設面の見直し、分娩・哺乳時の衛生対策や母豚及び子豚の栄養管理の改善による育成率の向上を目指す方が容易であろう。
 育成率は平均89.3%となり、84.3%〜94.7%とばらつきが大きく、90%に達しないところは哺乳豚管理の見直しが必要。哺乳中子豚事故で1腹当り1.5頭以上を損耗している2例については、哺乳子豚管理の見直しや改善が必要である。
 7例の平均離乳日令は23.6日で昨年度平均より0.7日の延長となり、指標日令を1.6日下回った。各農場の日令範囲は21.0日〜29.7日と較差があるものの、ほとんどの事例で3週離乳が定着している。
分娩回転数の平均は2.23回転で、指標値2.3回転に近く2回転以下は1例もなかったものの、最低値2.09〜最高値2.51と農場間の差が大きく出ている。
 7例の平均は20.2頭(17.0〜22.9頭)となり、指標値22頭を1.8頭下回った。7例中21頭以上が3例しかなく、特に20頭以下の事例については生存産子数(交配適期・妊娠管理)、育成率(哺乳子豚管理)の改善が望まれる。指標値22頭は生存産子数10.5頭×育成率91%×2.3回転≒22頭離乳としており、現在の農家技術において充分可能な数値である。  7例の種雌豚更新率平均は39.9%と指標値よりもやや低くなっている。これは前年度大きく更新し、本年度は更新を抑えた事例もあった為に、平均ではやや低くなっているが、ほとんどの事例が適正値で更新を行っている。
 更新に際しては年間を通じて毎月安定した分娩数が得られるように計画的に行うことが望ましく、また、淘汰・更新は個体ごとの繁殖成績記録によって的確に行い、母豚群の平均産次を4〜5産にすることが望ましい。

(3)肥育成績

 1母豚当り出荷頭数の平均は18.6頭で、前年平均の19.1頭に比べ0.5頭の減となり、15.0〜21.5頭と前年同様に農場間の差が大きく、指標値である21頭をクリアーしている農場は7例中2例だけであった。平均値は指標値と比べると2.4頭下回っており、この原因として、いろいろな要因が複合した結果ではあるが、その主な要因として考えられるものに哺乳中子豚の事故、離乳後の育成から肥育出荷までの事故による損耗がある。
 各農場により事故原因は様々であるが、飼養管理、衛生管理、畜舎構造など問題になっている要因の究明と対策が必要である
 事故率の平均は5.5%で指標の3%以下とは大きな隔たりがあり前年度平均より0.9%下回った。農場間較差は1.7%〜10.4%となり指標値の3%以下を達成した農場は2例だけであった。4%以上が7例中4例あり、せめて4%以下を目指して欲しい。
 診断農家の肉豚事故発生率の状況は季節の変わり目に高くなるものが多くあり、4月〜5月と9月〜11月の季節の変わり目に事故頭数が増えるものが7例中4例あった。このようなケースではPRRSの侵入や畜舎環境管理の問題によることが多く、徹底した衛生対策を講じる必要がある。
 近年、PRRSやPED等の新しい病気や、ヘモフィルス、パスツレラ等の慢性呼吸器疾病も広く浸潤している中で事故率3%以下という指標は、高いハードルとなっているが、せめて4%以下レベルにまで到達するよう努力が望まれる。
 本年度の平均生体重は110.4kgで、指標と比べ4.5kg下回った。平均枝肉重量は73.0kgで、ほぼ指標値に達しているものの71.3kg〜75.0kgと農場較差があった。 1母豚当り年間出荷枝肉重量では平均1,333.8kg(1,052.5〜1,535.7kg)となり前年平均より17kg下回った。これは肉豚1頭当りの枝肉重量は増加したものの、1母豚当りの年間肉豚出荷頭数が少なかったことによる。  本成績の農場飼料要求率の積算は、農場内での飼料給与総量を肉豚出荷生体量と候補豚頭数(110kgと推定)の合計体重で除したものであり、活豚出荷、棚卸体重の増減を見ていない。
 農場飼料要求率は平均で3.45(3.18〜3.81)で、指標値の3.4をクリアーしているものは3例であった。農場要求率には事故率が大きく影響し、特に肥育中期以後の事故が大きく関与するので事故内容を把握した損耗防止対策が必要である。
 母豚1頭当り利用面積の平均は13.0uと、前年値よりも指標値に近づいたが、最小11.0u、最大16.0uと開きは大きくなった。指標値13.3u以下の事例が7例中3例あり、中小規模の経営に密飼い傾向が見られた。
 豚舎面積と飼養密度の評価については、全体面積の大小よりも、ステージ別・用途別の豚房のアンバランスによることが多く、密飼いの多くは特に離乳豚房、肥育豚房の不足による例が多い。慢性呼吸器病による事故率の上昇原因として密飼いが主要な原因として重視されているが、頭数に合せた施設の改善か、施設規模に合せた飼養頭数の調節により事故率の低減を図って欲しい。

(4)収益・経済性分析

 養豚一貫経営における収益性を検討するにあたり、母豚1頭当りの生産物売上高をみると表−2・表−3にあるように、平均576,565円(414,178円〜695,957円)で前年平均より28,000円減少した。最小のNO.6と最大のNO.2では約280,000円の差があった。この差の要因は1kg当り枝肉平均単価が64円違うことや種雌豚1頭当りの年間出荷頭数の差が6.5頭あったことが考えられる。
 出荷豚の枝肉1kg当り販売額は表−3に示すように平均421円となり、最低のNO.6・380円と最高のNo.3・455円では75円もの差があり、この差が収益に大きく関係している。
 肉豚出荷価格の年間変動は大きく、出荷のタイミングによって同質の肉豚でも大きな収益差が生じる。平成11年度の東京市場上物価格は平均442円で本年度調査7農場の年間枝肉価格平均と比べると約21円高になっている。

 種雌豚1頭当り並びに肉豚1頭当りの生産費用及びその構成費目の内訳については表-2に示すとおりである。
 種雌豚1頭当りの7農場平均生産費用は482,150円となり、その構成費割合を円グラフにしたものが図-1である。平均では構成費割合の大きい順に、飼料費が過半の53.2%を占め、次いで人件費(給与手当+役員報酬)が16.6%、衛生費6.7%、これら主要3費目で76.5%となった。
 各農場の主要費目割合を棒グラフにしたものが図-2である。
 種雌豚1頭当りの生産物売上高と生産・販売費用を対比してみると、図-3のように両者は概ね比例した動きをしているが、No.3・No.5に関しては総収益が生産物売上高を大きく上回っており、事業外収益に頼るところが大きいことを示している。
 売上高に占める各生産費目の割合は、図-4に示すとおりである。飼料費の割合についての指標は50%以下であるが、7農場の平均は44.3%でありNo.2(52.0%)を除けば全て指標値をクリアーしており、概ね良好といえる。 人件費の割合は、平均17.5%となり、ほぼ指標値と同じ割合となった。特にNo.6のような枝肉販売価格が低く、種雌豚1頭当り出荷頭数も少ない経営でありながら高い人件費を払っているところは、較差が増幅され高い人件費率となってしまう。
 衛生費割合は、平均5.5%であったが、1.6%〜7.7%と大きな差があり、種豚当りの金額についても9,566円〜46,559円と大きな差があった。特に事故率の高いところは、予防、治療の薬剤使用も多くなりがちで、これによって衛生費割合が高くなる傾向がみられる。 (図-5
 生産費で最大構成比率を占める飼料費の1kg当り平均価格は表−3に示すように36.4円となり前年平均より5.7円下がった。それぞれの、飼料単価については、年間全飼料購入金額を全購入量で除したもので、自家配合(原材料価格のみで労賃をみない)、完配購入をしているところ等があるため単純に比較はできない要素もあるが、28円〜48円と1.7倍もの差があり、購入単価以外にも飼料給与体系の検討が望まれる。また、食品未利用資源の活用により、飼料単価を抑えている事例もある。  種雌豚1頭当りの当期利益の平均は34,278円となり前年平均と比べ約4,000円弱のプラスとなった。特に、No.2は費用合計が総収益よりも上回っており当期利益としてはマイナスになっている。  種雌豚1頭当り所得は、指標値10万円以上に対して7農場平均は99,415円(64,340円〜163,073円)であったが、10万円以上の所得があったところは3農場あり、この3農場が全体平均を上げている。所得は当期利益に役員報酬を加えたもので、役員報酬の高低が大きく関係している。(図-6)


3.診断事例の評価表1表2表3

(1)事例NO.1  労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ33.4頭・3.0頭で、1雄豚当り母豚11.1頭はやや雄豚保有過多である。自家更新を行っていない経営なので、仕上げ用の雄豚の資質・系統等、類似性等も配慮した雄豚の効率的活用により出荷豚の斉一性の向上を図り、少頭数での固体管理の徹底を行いたい。
 今期、夏場に母豚の事故が数頭あったため、母豚事故率が高くなっている。種豚に対しての暑熱対策が必要。
 分娩・育成成績は良く、1腹当り生存子豚頭数は平均11.1頭、平均離乳頭数も10.5頭となっており育成率も94.7%と高い。
 離乳日令は29.7日と7事例中最も哺乳期間が長く、分娩回転数が低い原因はここにある。母豚1頭当り年間離乳21.9頭とほぼ指標値だが、哺乳日令の見直しによる分娩回転数の向上を考えれば1母豚当り年間離乳24頭は目指せる。
 母豚更新は外部導入で行っており、本年度は15%と低い割合となったが、昨年度に大きく更新しているため本年度は更新を抑えている。
 1母豚当り年間出荷頭数は20頭に及ばないが、資質のそろった多産子母豚群を有する本経営では、上記の繁殖技術で述べた分娩回転数の改善で容易に指標値21頭はクリアーできる。
 出荷体重、枝肉重量はもう少し大きくしたい。ただ出荷豚の日令・重量と格付けの実状をよく分析し、給与飼料の切りかえ時期と給与方法、日令と併せて検討したい。
 事故率は1.7%と極めて低く良好である。全体的な豚舎飼養密度も指標値を上回り良好であるが、局所的にやや密飼いなステージがあるので注意が必要。
 今期は飼料要求率が極めて良く、少ない飼料費で1母豚当り年間1,442kgの枝肉を生産し好成績を上げている。ただ、今期は低豚価のため売上高も減少しており、売上高飼料費率がやや高い。
 1母豚当り年間1万円弱の衛生費は一般事例に比べ極めて低い。しかも、事故率1.7%は極めて良好。
 今期は高い生産性を期待できる新技術に投資したことにより疾病・事故が減少し、衛生費が著しく節減された他、豚の健康管理の改善により飼料効率が向上した。反面、新施設や導入繁殖豚の償却費や支払利息が高まり生産費を押し上げている 。

(2)事例NO.2

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ38.2頭・2.5頭で1雄豚当り母豚15.3頭はAI技術を用いない経営では比較的良好といえる。種雄豚の更新に当っては、これまでの成果を参考に実績のある雄の系統を補充したい。  前年更新母豚が良好な繁殖成績を出している。前年とほぼ同数母豚で1腹生産子豚10.2頭から10.5頭へ、1腹離乳9.6頭から9.8頭へと繁殖成績が向上した。 離乳日令21日としては、分娩回転数2.24回はやや低い。発情再起と初回発情における受胎率の向上へむけて繁殖管理の再点検を行い、回転率は少なくとも2.3回をクリアーしたい。  上記の繁殖成績の向上の成果として、肥育成績も大幅に改善された。肉豚出荷の上物率が前期より5%アップし、1母豚当りの出荷頭数・枝肉出荷重量ともに指標値をクリアーした。飼料要求率・事故率についても前年より大幅に改善されており、今期の水準が次期も維持できるようにしたい。
 豚舎利用面積に関しては、限られた施設内で、ステージによっては密飼いになっている。繁殖成績の向上はさらに密飼い化を助長するので、場合によっては母豚の少数精鋭化に着手して飼養環境を整え、これからも健康な豚の管理を行っていきたい。
 売上高飼料比率は、豚価が対前年比6%下落に対して、飼料費1kg平均価格4%安となり、また、低事故率と要求率の大幅改善で前期56%から今期52%に向上。しかし、なお指標値より高く改善の余地有り。衛生費は大幅な出荷頭数増にもかかわらず、ほぼ前年並に抑えた。飼料平均価格48.6円は飼料原料価格が低落している今期としては高い。飼料給与体系の再検討が必要。
 枝肉kg当り販売価格は対前年比で−30円だったのに対し、枝肉kg当り生産原価が対前年比で−57円と2倍近い額の抑制ができた。また、1母豚当り売上高が、低豚価にもかかわらず65,000円も増額できたが、その大部分は繁殖成績の向上による肉豚出荷頭数の増加によるものといえる。1母豚当り売上高約70万円を上げた成果は評価できる。

(3)事例NO.3

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ36.3頭・2.0頭で1雄豚当り母豚18.1頭はAI技術を用いる経営では比較的良好といえる。  年間分娩腹数が前年比92%となり、分娩回転数が2.09回転と昨年より大幅に低くなった。原因としては種付け後の再発が多いことが考えられ、AI技術活用の基本である注入前の精液性状と交配適期の再度確認。妊娠鑑定の実施を行いたい。
 総産子数は1腹当り11.1頭であった。しかし、分娩事故(死産・虚弱死)が1腹当り1.2頭となっており、生存産子数が9.9頭となっている。生存産子数を指標値の10.5頭にもっていくには、分娩事故は1腹平均0.6頭までに抑えたい。
 哺乳中の事故原因は、全体で多いものから圧死44%、虚弱20%、その他20%となっており、割合の高い圧死は生後3日間に起きることが多いため、この期間の管理に気を配りたい。
 年間肉豚出荷頭数は前年比84%となり1母豚当り出荷頭数17.5頭となった。原因は分娩腹数の少なさと事故率の増加にある。
 肉豚肥育成績は順調で年間上物率は約75%にもなる。肉豚1頭当り出荷体重・枝肉重量は、ほぼ前年同比になっているが、母豚1頭当りの枝肉出荷重量は出荷頭数が少なかったため大幅に減少した。
 離乳後事故率は7%となり、この経営はここ数年、事故率上昇の傾向にあるので、原因究明と対策が必要。
 豚価低落の今期にあって、枝肉kg販売額は前期と同額で7事例中トップの455円だった。出荷頭数は1母豚当り17.5頭と前期より大幅に減少したものの、肉豚出荷上物率が高く、肉豚1頭当りの販売金額も今期事例中トップであった。母豚当り売上高は前期に比べ9万弱の減額となったが、これは上記で述べた1母豚当りの肉豚出荷が少なかったことにある。
 飼料kg平均価格は41円で前期に比べ−6円となり、飼料市場価格が低かった今期にあっては、まだ高い水準にあるが、生産費用削減に大きく貢献し、これが今期の生産性の低下を経営的にカバーしている。また、利益に関しては補填金等の収益に負うところが大きく、より一層の生産性の向上が不可欠である。

(4)事例NO.4

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ54.0頭・3.0頭で、1雄豚当り母豚18.0頭と一部AI技術を用いる経営としては良好。人員当り平均飼養母豚数が前期より約7.8頭の減頭、雄豚も1.4頭の減頭。この減頭によりAI化率を上げ、適正規模による適正管理が望める。  前々期・前期と増頭後、今期は母豚選抜により減頭した。これにより母豚群の資質向上が推察され、その成果が読み取れる。1腹あたり生存産子数は10.8頭と指標値以上で良好である。近年の育成率が総じて低く90%はクリアーしたい。特に哺乳期の圧死による事故が全体の59%を占めており、これは前期より圧死率が上昇している。管理面より施設面に問題がないか検討を要す。
 離乳日令は22.9日で分娩回転率は2.51回転と極めて良好ではあるが、この成績は母豚減少に伴う時差もあるので、これを今期にとどめず維持継続したい。
 今期は母豚頭数変動の時差もあるが、1母豚当り肉豚出荷21.2頭は良好。出荷時生体重(110kg)・枝肉重量(73kg)ともに前期を上回り、1母豚当り年間枝肉出荷重量は1,519kgと極めて良好な成績である。
 飼料要求率と事故率はともに改善方向にあり、肥育期の成績は良好であるが、近年の事故率の推移をみると上昇傾向にある。その要因の1つは1母豚当り豚舎面積からみて、まだ密飼いの傾向がある。母豚の減頭で前期よりも緩和されているものの、施設能力と現状の豚の動態を見直し、適正規模での経営向上を期待したい
 飼料価格の低下、飼料要求率の改善に加え、1母豚当り出荷頭数の大幅増に伴う売上高増額を反映して、売上高飼料費率40%を割る好成果を得た。
 売上高所得率は、枝肉kg当り販売額がこの低豚価期にありながら前期より2円高での販売を果し、大幅な増益を達成できた。
 飼料平均価格は飼料原料価格が総じて低下期にあったが、前期より−5円のコスト節減をした経営努力の効果は大きい。
 1母豚当り売上高は、離乳後事故率、飼料要求率等の基本技術の積み上げにより、1母豚当り年間枝肉出荷重量1,500s以上の指標値をクリアーし、この低豚価期に枝肉kg販売額を対前年比2円高で販売。これにより1母豚当り、前年より約10万円増の65万円を売上げたことは高く評価できる。

(5)事例NO.5

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ56.2頭・3.1頭で1雄豚当り母豚18.1頭はAI技術を用いる経営では比較的良好といえる。AI技術導入経営として前期より雄豚保有数を減らし、今期末には少頭数で効率的な活用が行われている。  1腹当り総産子数11.6頭はよいが、死産も0.9頭とやや多い。育成率85.4%は前期よりもわずかに改善されたが90%はクリアーしたい。特に哺乳中の事故が1腹当り平均1.6頭もあり、折角の生存産子数10.8頭も離乳頭数が9.2頭まで減ってしまう。事故原因として圧死が55%、虚弱死43%となっており、これらの原因究明と対策が必要。
 1腹当り離乳頭数は9.2頭と前期並であるが、分娩回転数がやや低下したため1母豚当りで1.5頭の減少になった。
 1母豚当り出荷頭数が19.3頭と前期よりやや減少したにもかかわらず、枝肉の大型化で1母豚当り枝肉出荷重量を1,388kgに増加できた。しかし、指標値の1,500kg以上をクリアーするには最低でも1母豚当り20頭出荷は必要となる。そのためには、上記で述べた哺乳豚の育成率90%が不可欠である。
 飼料要求率は前期より更に改善され、この経営規模で3.2%は極めて良好である。
 離乳後事故率の9.21%は非常に高く、特に8月、12月の事故率が高く、その内容の分析と原因を究明し、来期に向けての対策が必要である。
 飼料費率36.4%は極めて良好である。低豚価を十分にカバーできる飼料価格の引き下げと飼料要求率改善の成果である。
 今期の1母豚当り衛生費は前期に比べ5,600円強の増額になっており、これは事故率が前年より約1%上昇したことによる増額と考えられるが、金額の増減の適否より事故内容の究明と衛生対策の見直しが必要。
 今期、生産原価については、主として飼料価格の引き下げと人件費の抑制努力で、1母豚当り生産原価を前期に比べ57,000円強引き下げに成功し、これにより枝肉1kg当りでみると45円引き下げることができた。
 この結果、低豚価期にあっても利益・所得は増額となり良好ではあったが、事故率や育成率等の改善により、更なる成果を期待したい。

(6)事例NO.6

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ78.2頭・4.8頭で1雄豚当り母豚16.3頭はAI技術を用いていない経営では比較的良好といえる。
 今期は年間を通して母豚事故が多く、常時飼養頭数に対する事故率は6.8%と高い。今後の母豚事故の対策が必要。
 前期末の高率母豚更新により、ある程度の産子数減少はやむを得ないが、1腹当りの分娩子豚事故(死産・虚弱死)の1.9頭は多く、妊娠豚の栄養管理面、分娩管理作業面等の見直しが必要。
 1腹当り生存産子数が9.0頭と低い上に育成率も86%と低いため、1腹当り離乳頭数は7.8頭と極めて少ない。また、授乳日令22.6日で分娩回転率2.21回もやや低い。離乳後の発情再起をきちんと把握し、交配適期での種付けによる受胎率の向上を目指し、生存産子数を指標値10.5頭に近づけていきたい。
 母豚1頭当り出荷頭数15.0頭で母豚1頭当り枝肉出荷重量1,052kgはあまりにも少ないが、上記の繁殖成績の結果としてはやむを得ない。
 離乳後の事故率についても、ここ数年上昇しており、特に5月と9月以後の事故率が目立つ。単なる疾病対策(治療・予防)に止まらず、豚の移動と管理作業体系、栄養管理、各施設と飼養頭数の適否等も含めた総合的な検討が望まれる。
 飼料要求率も大幅に低下しており、原因は肥育期の事故だけでなく、全ステージにあるものと考え、この点でも検討を要す。
 売上高飼料費率は前期46.6%から今期42.3%と改善されたが、その内容をみると飼料価格の低下と併せて、1母豚当り出荷頭数の減少に基づくもので前向き評価はできない。
 衛生費支出はわずかに増加しているが、育成率、事故率、飼料要求率等、総体的な生産性の低下に対して抜本的な衛生対策の見直しが必要。今後、事故率低減に伴う衛生費の増額もやむを得ない。
 1母豚当り売上高は、今期消費低迷の下で前年以上の低豚価となったことに加え、1母豚当り出荷頭数15頭と大幅減少したため、前期に比べ7万円弱の減少となった。
 結果、利益・所得を大幅に減らした。今後の長期的展望に立っての経営技術の総合的なチェックを行い、生産性の回復を期待したい。

(6)事例NO.7

 労働人員1人当りに対しての年間平均飼養母豚数・雄豚数は、それぞれ62.3頭・4.1頭で1雄豚当り母豚15.2頭は一部AI技術を用いている経営としては雄豚飼養過多といえる。近年、母豚更新率が連続して50%を上回っており、計画的な候補豚選抜・更新を行いたい。
 母豚事故がやや多く、特に夏場の事故が多いようなので事故原因の把握と改善を要す。
 1腹当り総産子数10.9頭で生存産子数が9.6頭と、その差1.3頭が分娩事故となっている。分娩事故で死産の割合が高いようであれば、疾病汚染、栄養管理、施設及び妊娠母豚群の移動システムなど全体面から再点検し、改善対策が必要。
 育成率が低下傾向にあり、また22日離乳にしては分娩回転も2.22回とやや低いため、1母豚年間離乳頭数は18.9頭と少ない。
 育成率については、母子豚の栄養管理と衛生対策、また施設面での問題がないか検討し哺乳中事故を1腹当り1頭以下に抑えたい。
 分娩回転数については、特に離乳後5日目までの発情再起と受胎率の向上を目指し、再発豚を早期発見し空胎日数を減らすこと。
 1母豚当り肉豚出荷頭数16.2頭は今期調査事例中で下位2位。改善のためには上記繁殖成績の向上が前提となる。
 肥育事故率は非常に高く、ここ数年10%台が続いている。事故疾病の実態把握と衛生対策の見直しと併せて施設利用や豚の移動方式も含めた飼養管理の総合点検が望まれる。
 1母豚当り年間枝肉出荷重量は1,109kgと低く、飼料要求率も5.94と大幅に悪化しているが、育成率、事故率が改善されれば向上する。まずは、次期18頭出荷を目指して点検と改善を進めたい。
 売上高飼料費率は43.2%と指標値50%以下をクリアーしている。1母豚当り出荷頭数が少なく、売上額も減少している中で、それ以上に飼料費を抑えることにより飼料費率を下げた。
 1母豚当り衛生費は前期より1万8千円強の減額で制御されたが、事故率、育成率、出荷頭数等問題も多く、衛生対策の適正利用が必要。
 今期は飼料原料価格が総じて安く、飼料単価を大幅に抑制できたことと、衛生費、人件費抑制で生産原価を引き下げ短期的調整はできたが、養豚事業の基本をなす生産性が前段段階で低下してきている点を厳しく受け止める必要がある。


4.指導の方向と対策

 7農場の繁殖・肥育に関する成績を通してみると、良好な経済成果をあげている例もあるが、最終的に種雌豚当り年間出荷頭数・年間出荷枝肉量が少なく、これが売上高、収益性を抑えている。その要因は多岐にわたるが、主な改善項目をあげれば生産子豚頭数、分娩回転数、繁殖・育成・肥育の全期を通じての損耗防止である。

(1)繁殖性向上対策

 受胎率向上には授乳母豚の個体栄養管理を徹底して行い、適度なボディーコンディションで離乳し、5日以内での発情再帰を促し、初発情交配で85%以上の受胎率を目指したい。
 受胎の成否は自然交配、人工授精を問わず交配適期の把握が最も重要であり、そのためには発情状況の観察を注意して行い、2〜3回の複数回交配が望ましい。交配に当たっては正常精液の利用が前提であり、定期的な精液検査は欠かせない。
 再発情豚の交配に当たっては、発情徴候、交配時期に留意し、さらに不受胎となった場合の供用断続か更新かについては早期に判断する。妊娠鑑定は早期に確実に行い、空胎豚の無駄な飼養を無くし、妊娠豚に関しては個体管理を徹底して事故防止に努める。また、受胎率低下は夏場交配(暑熱環境)によることが多く、気温の上がらない早朝に交配を行ったり、「ドリップクーリングシステム」の導入などの夏場対策が必要である。

 折角の妊娠も分娩まで至らなければ大きな損失になる。妊娠豚の栄養・飼養管理を十分に注意し、母豚移動などに伴う物理的事故原因の排除、日本脳炎やパルボの予防処置等、早・流産をさせないよう心掛け妊娠豚を無事分娩させたい。

 分娩回転数は、離乳日数と受胎までの日数によって決まるが、最近になって離乳日令の早期化が進み、本年度の対象農家でも新たに2戸が21日前後離乳へと短縮を始めた。このような実状からみると指標の2.3回転はむしろ低すぎるともいえる。2.4回転の場合でも離乳日数21日、妊娠期間114日として、離乳後受胎まで13日の余裕がある。更新豚がある実際の経営では更新豚の繰入れ時期と淘汰から更新豚繰入れまでの間隔により異なるので、一概にはいえないが、2.4回転は決して高い目標ではなく、2.5回転も現実の値となっている。
 その他、種付け後の再発チェックを徹底し空胎豚は早期に発見し再交配もしくは繁殖障害などで働けない母豚を早期に出荷していくことも全体の年間分娩回転を増やしていくことになる。

 種雌豚1頭当りの生産性を上げるには、育成率の向上と安定が欠かせない。本成績の平均では指標値をやや下回り、80%台の農場が過半数あり指標値91%以上はクリアーしたい。
 育成率向上の要点は、哺乳子豚の飼養・衛生管理で、本事例中の哺乳子豚事故内容として虚弱と圧死によるものが多く、虚弱に関しては妊娠豚の適切な栄養管理を行い、なるべく虚弱子豚を出さないよう心掛ける。また、圧死に関しては分娩房の構造や子豚の居住環境、母豚の性質・泌乳能力など幾つかの要因が考えられるので、原因の究明と対策が必要である。

(2)肥育成績向上対策

 対象経営における肥育成績の改善ポイントは種雌豚1頭当り出荷頭数、即ち枝肉出荷量の向上にある。
 2000年1月に県畜産経営指標の改訂があり肥育技術では肉豚出荷生体重1115kg前後(旧指標110kg)となり枝肉重量75kg前後(旧指標72kg)となった。
 これら指標値をクリアーするためには、多様化する疾病に対する予防対策の徹底と密飼い等の飼養改善により、生産した豚の損耗を防止し事故率の低下に努め、1母豚当り年間出荷頭数21頭以上、出荷枝肉量1,500kg以上を目指して欲しい。

 肉豚評価を左右する主な要因は概ね3つに大別される。

      @素豚(遺伝的要因)
      A飼養技術(飼料の質・栄養水準と給与方法、根群の編成等)
      B出荷技術(出荷日令・体重・出荷先選定)

 最も基本的な要因は@の遺伝的資質であるが、これは母豚群の品種・系統構成によるもので長期にわたるデータに基づく選抜が基本で短期的な改良は難しい。
 飼料の質と給与方法については、素豚の資質にあった栄養レベルの飼料により適度な発育の早さ(出荷日令と体重)で高い上物率が得られるよう飼料の選択と給与をする。
 同時離乳腹数の多い大型経営ではできるだけ同質、近似日令の豚群編成に心掛け、雄雌別群として豚群の資質と発育ステージにあった段階的飼料栄養水準飼料の給与(フェイズフィーディイング)を行う。
 肉豚出荷に対しての個体チェックは不可欠であり、個体計量はその基本である。個体標識により、個体経歴から枝肉評価まで一連のデータとしてその結果が次の交配や選抜・淘汰にフィードバックできるシステム化が望ましい。

(3)畜産環境対策

 家畜排泄物は、これまで畜産業における資源として農産物や飼料作物の生産に有効に利用されてきた。しかしながら、近年、畜産経営の大規模化の進行、高齢化に伴う農作業省力化等を背景として家畜排泄物の資源としての利用が困難になりつつある一方、地域の生活環境に関する問題も生じている。
 畜産経営に起因する苦情発生率は、家畜飼養規模の拡大や混住化の進展等に伴い増加している。その苦情発生件数の畜種別の割合は平成10年畜産局調べによると乳用牛が最も多い34%についで豚が32%となっている。苦情の内容は悪臭関連が最も多く、ついで水質汚濁である。家畜排泄物について、その適正な管理を確保し、堆肥として活用するなどの資源としての有効利用を一層促進していく必要がある。

 畜舎内の臭気は舎内にある糞尿の量に左右され、畜舎内の基本的な臭気対策は糞尿の早期搬出の励行である。また、周辺の住宅事情等によっては周囲から苦情の出る前に消臭剤・脱臭剤の利用など、先手を打った行動が極めて重要である。

 有機農産物需要の増大を背景に家畜糞の需要が高まっており、地域を越えた広域流通化の機運にある。
 これに応えて、供給できる堆肥の質量・販売条件などを堆肥流通情報として組織的に広報することを畜産会としても検討しているので、良質堆肥の生産と流通の情報化への積極的協力を願いたい。

(4)豚肉の販売取り組み

 本年は、乳製品の食中毒事件が大きな問題となったこともあり、消費者は食品の安全性にとても高い関心を持つようになっている。これからは消費者に対する食肉の安全性・信頼性の提示は必要不可欠なものとなり、そのためには、生産段階での適切な飼養管理、一般衛生管理を行い、より健康で安全な豚肉を消費者に提供していき、外国産との差別化を図っていきたい。

 これからの養豚経営は、豚肉生産だけでなく経営の生き残りをかけて、どのような付加価値を付けて何処に売り込むのかのマーケティング戦略が必要になる。
 産地銘柄化だけが付加価値を付ける方法ではなく、消費者のニーズに応えられるような豚肉を生産し、豚肉生産者の名前を前面に出したり、ネーミングに工夫をこらし消費者に親しまれ、評価される流通・販売を心掛ける必要がある。

 最近になって各家庭にパソコンが普及しはじめ、インターネットや電子メールなどを活用して国内外の物品や情報を入手できるようになり、インターネットショッピングでほとんどの日用品は揃ってしまう。こうした時代に神奈川県内でも、個人や農家団体で自分達のホームページを開設し、その中で自家産物の広告・販売促進を行っているところがある。販売物の紹介だけでなく生産者の顔や生産農場などの写真も載っていて、これも生産者の顔が見える販売方式の一部であり、購入者は安心して申し込むことができる。