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平成22年6月号(第594号)
四月二十日に宮崎県において口蹄疫が確認されて以降、五月十九日現在、一三一事例において疑似患畜が確認され、十一万八千頭余りの牛、豚等の殺処分が決定されました。しかしながら、感染は依然として拡大傾向にあることから、あらゆる機関、団体、県民が一丸となって感染拡大を阻止し、口蹄疫を早期に撲滅するため、五月十八日、宮崎県知事は『非常事態宣言』を発しました。
つきましては、本県におきましても、口蹄疫の侵入を未然に防止するため、次の防疫対策等について再度確認していただきますようお願いします。
一 口蹄疫とは
原因は「口蹄疫ウイルス」です。
牛、水牛、めん羊、山羊、豚、しか、いのしし等が感染します。
突然40〜41℃の発熱、元気が消失すると同時に多量の流涎(よだれ)がみられ、口、蹄、乳頭等に水疱やびらんを形成し、食欲不振、跛行(足をひきづる)を呈します。
二 侵入防止とまん延防止対策
口蹄疫ウイルスの感染力は非常に強く、そのウイルスの侵入を未然に防ぐためには、消毒等の衛生管理を徹底することが非常に大切です。
○農場内への関係者以外の出入りを極力控えてください。
○踏み込み消毒槽の設置、農場に出入りする際の作業着、靴の交換や農場を訪問する車両や持ち込む器具等は必ず消毒してください。
○野生動物や害虫の侵入防止など飼養衛生管理基準の厳守に努めてください。
○飼養する家畜について毎日健康観察を行ってください。感染初期は特徴的な症状を示すとは限りません。異常があった場合は、直ちに当所に連絡してください。
三 口蹄疫ウイルスに有効な消毒薬
○ヨウ素系消毒薬(クリンナップA、ファインホール、バイオシッド30)
○塩素系消毒薬(アンテックビルコンS、クレンテ、スミクロール)
○アルデヒド系消毒薬(グルタクリーン)
○消石灰
○その他(アリバンド、クリアキル―100)
逆性石けんは口蹄疫ウイルスに効果がありません。
口蹄疫に効果のある消毒薬の種類、消毒方法について、わからないことがありましたら、家畜保健衛生所にお問い合せください。
口蹄疫は、牛、豚等の偶蹄類の動物の病気であり、人に感染することはありません。また、感染牛の肉や牛乳が市場に出回ることはありませんが、仮に感染牛の肉や牛乳を摂取しても人体に影響ありません。
(畜産課安全管理グループ)



皆様ご存知のとおり平成二十二年四月二十日に宮崎県において口蹄疫の発生が確認されました。わが国においては十年振りの発生です。多くの畜産関係者の不眠不休の防疫活動にも関わらず、終息するどころか拡大し、神奈川県への侵入も懸念されるところです。このような状況を踏まえ、平成二十一年度から開始された牛・豚の家畜防疫互助事業について再度説明いたします(神奈川畜産情報・平成二十一年七月一日、第五八三号に掲載)。この機会に未契約農場は事業参加についてご検討下さい。また、既契約農場は契約内容を是非見直すことをお勧めします。
家畜防疫互助事業は、口蹄疫、豚コレラ等の海外悪性伝染病が万一発生した場合、畜産経営への影響を緩和するため、生産者自ら積立を行い、発生時の損害を互助補償する仕組みに国((独)農畜産業振興機構)が支援を行う事業です。
事業のポイントは、○牛や豚等を飼育する生産者の方は、どなたでも参加できます。ただし、契約締結時点で家畜伝染病予防法に基づき、移動制限等区域内の生産者は加入できません。○加入者は飼養衛生管理基準の遵守が必要となります。○この事業の対象となる家畜伝染病は、「口蹄疫」、「牛疫」、「牛肺疫」、「アフリカ豚コレラ」及び「豚コレラ」の五疾病です。○事業実施期間は平成二十一年度〜二十三年度までの三年間です。
生産者積立金の単価(例)ですが、肉用牛の繁殖雌牛(二十四ヶ月齢以上)が四十円/頭。肉専肥育牛が三十円。乳用牛(二十四ヶ月以上)が四十円。豚の繁殖雌豚が八十円。肥育豚が二十五円です。(豚については、契約区分に従来と同様の「家族型」と雇用確保を目的とした「企業型」があります。企業型は単
価が若干高くなります。)
互助金の種類(例)は、とう汰互助金‥移動制限区域等で家畜防疫員の指導等により家畜を「自主とう汰」したときに交付されます。肉用牛の繁殖雌牛の上限単価が四十四万二千円/頭。乳用牛(二十四ヶ月以上)が三十九万六千円。繁殖雌豚が
七万九千円です。
経営支援互助金‥家畜伝染病予防法に基づき殺処分又は自主とう汰した後に経営再開のため家畜を導入したときに家畜の種類により一定額が交付されます。また、殺処分又は自主とう汰した家畜を焼却・埋却したときに、一定額の焼却・埋却等互助金が交付されます。
互助基金は牛・豚は別々に管理されています。
牛・豚の互助事業参加申し込みは、各農業協同組合(畜産担当者)が窓口となり、(社)神奈川県畜産会にお願いします。詳細は農協担当者又は(社)神奈川県畜産会家畜衛生部までお問合せください。
なお、鶏等の互助事業については神奈川県養鶏協会が窓口となっています。
『法令や飼養衛生管理基準を遵守し、疾病予防と安全な畜産物の生産に努めましょう。』
(家畜衛生部)

| 平成二十二年度 神奈川県畜産振興会
「畜産振興助成事業」決定
|
平成二十二年五月十九日畜産センターにて、畜産振興会の第四十六回通常総会が開催され、畜産振興助成事業予算が承認されました。
畜産振興会では、毎年県内の畜産振興を目的に助成事業を実施していますが、本年度は十二団体の十六事業に総額四五五万円の助成を決定しました。
また、併せて畜産フェスティバル関連予算(三〇〇万)も承認され、今年は、十月十七日(日)にかながわトントンまつり、同月二十四日(日)に家畜に親しむつどい、同月三十日(土)に大野山フェスティバルの開催(予定)も決定しました。
畜産振興会としては、これら事業を積極的に実施し、本県の畜産振興に寄与していきたいと考えています。
(畜産振興会 小島)



(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)
肥育牛一頭当たりの四半期平均粗収益(全国平均)が四半期平均生産費(全国平均)を下回った場合に、その差額の最大八割を品種区分別に補てんします。今までのマルキン事業と補完マルキン事業をあわせた形です。基本的な仕組みはマルキン事業と同じです。
対象品種
肉専用種・交雑種・乳用種
拠出割合
生産者と国が1:3の割合で積立金を拠出します。
事業期間
平成二十二年度から二十四年度の三年間となります。
新マルキン事業の概要
@事業加入の要件が緩和されました。肉用牛を肥育する生産者であれば、事業への参加が可能です。(認定農業者の要件がなくなりました)
A全国一律の仕組みをなりました。積立単価、補てん金単価の算定方法を全国一本化しました。
B補てん金交付がない場合、積立金は戻ります。事業終了後、積立金に残余がある場合、拠出割合に応じて生産者に返還されます。
事業参加申込み
平成二十二年七月三十日までに、事業実施主体(神奈川県畜産会)へお申込み下さい。
申込期間を過ぎると、途中契約はできませんのでご注意下さい。
(経営指導部 倉迫)

平成二十二年一月〜三月に係る四半期分の平均推定所得(全国平均値)の算定結果が農畜産業振興機構より公表され、これに基づき、肥育牛一頭当たりの肥育牛補てん金単価(マルキン事業)及び肥育牛特別補てん金単価(補完マルキン事業)が決定しました。
◎肥育牛補てん金単価(マルキン事業)
肉専用種 五九、五〇〇円
交雑種 三三、〇〇〇円
乳用種 二二、七〇〇円
◎肥育牛特別補てん金単価(補完マルキン事業)
肉専用種 九、八〇〇円
交雑種 三三、五〇〇円
乳用種 二〇、八〇〇円
両事業の補てん金は全品種について六月末日に交付します。
(経営指導部 倉迫)
〜乳用種に生産者補給金が交付されます〜
平成二十一年度第四四半期(二十二年一〜三月)の指定肉用子牛の品種区分ごとの平均売買価格は次のとおりでした。
黒毛和種 三七六,二〇〇円
交雑種 二三七,〇〇〇円
乳用種 九一,七〇〇円
乳用種は保証基準価格(一一六,〇〇〇円)を下回りましたので、その差額、二四,三〇〇円の生産者補給金が交付されることになりました。
黒毛和種・交雑種は保証基準価格、合理化目標価格を共に上回っているので、生産者補給金の交付はありません。
((社)神奈川県肉用子牛価格安定基金協会)

大相撲夏場所で優勝した横綱白鵬関に宮崎県知事は一九八六年から続けている、宮崎牛一頭分の肉を知事賞として贈ったとのこと。日本相撲協会からは宮崎県の口蹄疫対策事業に五〇〇万円の支援をするとのこと。
宮崎県は口蹄疫の発生から一ヶ月以上が過ぎ、誰もが願っていた終息に至るどころか、患畜、疑似患畜の殺処分すら滞っているとか。我国で初のワクチン接種後の殺処分方式が施行され、何もかも前代未聞の出来事です。殺処分後に迅速に行うべき焼却・埋却も滞っているとは関係者
の苦悩は如何ばかりかと心が痛みます。そして何も手伝う事が出来ない自分の立場が歯痒くてなりません。
病勢の拡大ばかりではなく、消費者が口蹄疫を誤解して肉類の購入意欲が低下しないかと、これもまた心配の種ですね。
ある料理雑誌の見出しによると、じゃがいも、玉ねぎは今が旬、肉とじゃがいもの煮物が一番の作り時だそうです。
おふくろの味といえば「肉じゃが」牛肉の薄切りに、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんを炒めて、最後に味付けして煮詰める。この旨い事。豚肉を塩水につけて、じゃがいも、にんじん、玉ねぎを煮て柔らかくなってから肉を入れて火を通すのは、これこそ「豚(とん)じゃが」。
豚肉とじゃがいものスープ煮。豚肉と玉ねぎのチーズスープなんて旨そうですなー。
天候不順のままに迎えた五月の末、北海道の千歳空港に降りたら桜が満開でした。福田首相時代に開催された洞爺湖サミットの地=洞爺湖町では例年より二週間遅れの染井吉野が満開で、八重桜は蕾でした。
関東より二ヶ月遅れのホテルの花見酒は北海道産のステーキとサッポロビールでした。
肉は安全・安心であり、美味しく、滋養に富み、精神安定作用にも優れた効用があることを提唱しましょう。
更には糖尿病予備軍の方々に、食後直ぐに血糖値を高める「ご飯」よりも「肉類」を推奨しませんか。
口蹄疫対策には何の力にもなれない小生は今宵もじゃがいも、玉ねぎの肉料理で一杯やりながら、口蹄疫の「五月末終息」を祈っています。
(忠九朗)

●はじめに
我が国では、濃厚飼料の90%を輸入に頼っており、食糧自給率向上に向けて飼料用米が注目されています。特に今年度以降の作付けに対する補償制度の実施を受け、生産量増加が見込まれ、それを機に稲作農家と畜産農家の耕畜連携が期待されています。
すでに他県では飼料用米の畜産利用技術に関する各研究が行われており、様々なメリット・デメリットが報告されています。メリットとして、@飼料自給率の向上、A地域環境に基づいた資源循環型農業の確立、B水田の有効利用(耕作放棄地
表1:飼料用米分析結果
| 品種名 |
ユメアオバ |
ホシアオバ |
黒米 |
| 水分 |
14.50 |
14.60 |
14.80 |
| 粗蛋白質 |
5.90 |
6.20 |
8.40 |
| 粗脂肪 |
1.70 |
2.00 |
3.20 |
| 粗繊維 |
7.50 |
6.60 |
1.20 |
| 粗灰分 |
5.10 |
4.00 |
1.80 |
| NFE |
65.30 |
66.60 |
70.60 |
| Ca |
0.03 |
0.02 |
0.03 |
| P |
0.21 |
0.24 |
0.35 |
|
表2:使用飼料の成分分析
| 飼料配合割合 |
ユメアオバ
10% |
ホシアオバ
10% |
黒米
10% |
ホシアオバ
30%
+添加飼料 |
配合飼料
(対照区) |
| 水分 |
11.80 |
11.81 |
11.83 |
11.21 |
11.50 |
| 粗蛋白質 |
16.79 |
16.82 |
17.04 |
17.02 |
18.00 |
| 粗脂肪 |
5.30 |
5.33 |
5.53 |
3.83 |
5.70 |
| 粗繊維 |
3.50 |
3.41 |
2.87 |
3.96 |
3.10 |
| 粗灰分 |
11.13 |
11.02 |
10.80 |
13.50 |
11.80 |
| NFE |
51.48 |
51.61 |
51.93 |
50.48 |
49.90 |
| Ca |
4.23 |
4.23 |
4.23 |
4.60 |
4.70 |
| P |
0.56 |
0.56 |
0.58 |
0.52 |
0.60 |
|
表3:生産性への影響評価成績
| 30〜36週齢 |
ユメアオバ
10% |
ホシアオバ
10% |
黒米
10% |
ホシアオバ
30%
+添加飼料 |
配合飼料
(対照区) |
| 産卵率(%) |
87.2 |
78.9 |
85.6 |
82.2 |
91.2 |
| 平均卵重(g) |
57.9 |
59.4 |
58.8 |
56.6 |
59.8 |
| 飼料摂取量(g/日) |
1週間以内 |
86.9 |
79.8 |
95.2 |
82.1 |
82.1 |
| 30〜36週齢 |
105.0 |
99.8 |
107.6 |
107.6 |
104.3 |
| 飼料要求率 |
30週齢 |
2.0 |
2.2 |
2.2 |
1.9 |
2.4 |
| 31週齢 |
2.3 |
2.6 |
2.4 |
3.3 |
2.3 |
| 生存率(%) |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
91.7 |
100.0 |
|
表4:鶏卵評価成績
| 34週齢 |
ユメアオバ
10% |
ホシアオバ
10% |
黒米
10% |
ホシアオバ
30%
+添加飼料 |
配合飼料
(対照区) |
| ハウユニット |
87.8 |
85.3 |
88.6 |
83.5 |
82.0 |
| 卵殻強度(kgf) |
4.33 |
3.64 |
4.43 |
4.36 |
3.74 |
| 卵殻厚(mm) |
0.367 |
0.345 |
0.353 |
0.354 |
0.353 |
| 卵黄色 |
13.3 |
13.5 |
13.2 |
11.7 |
12.8 |
| 卵黄重(g) |
14.2 |
14.8 |
14.6 |
14.0 |
15.4 |
| 卵白重(g) |
43.7 |
44.6 |
44.2 |
43.6 |
44.5 |
| 卵黄重比(%) |
24.6 |
24.9 |
24.9 |
23.0 |
25.7 |
| 卵白重比(%) |
75.4 |
75.1 |
75.1 |
77.0 |
74.3 |
| 血斑(%) |
6.7 |
33.3 |
13.3 |
13.3 |
13.3 |
| 肉斑(%) |
6.7 |
6.7 |
13.3 |
0.0 |
0.0 |
|
の解消)、C新しい水田穀物としての利用、D非常時の主食用米の代替え、E籾のままの長期保存・輸送が可能といったことが挙げられます。一方、デメリットとして、@コスト高、A主食用米への混入及び主食用米への流用の可能性、Bこぼれイネのリスク、C専用品種の選抜や種子の確保、D畜産利用における物理的加工の必要性とそのコスト増といったことが挙げられます。ただ、デメリットのうちDの物理的な加工の必要性については、鶏の場合、豚や牛と違い籾米での給与が可能になり解消されるため、養鶏経営での飼料利用への期待が特に高まっています。
そこで当所では県内の養鶏農家が飼料用米を実際に利用する場合のメリット・デメリットを確認し、養鶏農家が利用する上での参考に資するため、当所の鶏を用い実証試験を行いましたので、その内容について紹介させていただきます。
●実証試験内容
30週齢の採卵鶏(ロードアイランドレッド)に、ユメアオバ、ホシアオバの2品種の飼料用米を、籾のままで給与しました。それに加えて主食用の型落ち2番米の「黒米」の玄米を給与し、生産性・生産物への影響・特性の評価を行いました。
試験区は、1区12羽で一般の成鶏用配合飼料(粗タンパク質:以下CP18%)にそれぞれユメアオバ10%、ホシアオバ10%、黒米10%、ユメアオバ30%をそれぞれ添加した区と、配合飼料のみを給与した対照区を設定しました。なお、試験に使用した飼料用米は農業技術センター普及指導部の協力のもと、
県内の農家から供給してもらいました。
●調査結果
ア・ 飼料としての栄養性
表1に飼料用米の成分分析結果、表2に今回の試験で使用した飼料の成分分析結果を示しました。
一般的に成鶏の飼料にはCPが17%以上、代謝エネルギー:以下ME)が2800kcal以上必要とされています。今回の飼料用米10%給与区ではCPが17%弱、MEが2900kcalと必要な栄養として問題は見られず、アミノ酸やカルシウムなど微量要素においても改めて添加する必要性は見られませんでした。しかし、飼料用米30%給与区では表1の結果からCP等が不足することが想定されました。そのため、今回の試験ではCP、MEの低下を補うため飼料用米30%給与区にはコーングルテンミール・大豆粕10%、アミノ酸・カルシウム等の添加飼料5・9%を添加し、配合飼料は54・1%としました。
イ・ 鶏に給与した時の生産性に対する影響、嗜好性
表3に生産性への影響評価成績、 図1に産卵率の推移を示しました。
各飼料用米の給与を開始し、その試験期間内での飼料総摂取量に対照区との明確な違いは見られませんでした。また、各飼料用米給与区の給与開始1週間以内の摂取量を対照区と比較したところ、ほぼ変わりませんでした。しかし、対照区も含めた全試験区で、試験による環境の変化のストレスがかかり、指標とされる1日当たり摂取量100gを割ってしまい、給与開始後1週間の産卵率

が低下しました。その後回復し34週齢以降には全区で85%以上の産卵率が確認されました。
ウ・ 鶏に給与した時の生産物に対する影響、特性
表4に鶏卵評価成績を示しました。
給与試験開始後5週目(生後34週齢)の鶏卵評価を行った所、ハウユニットの数値が対照区81・96に対し、飼料用米給与区では83〜88と数値に幅はありますが、全体的に高くなる傾向が見られました。卵殻強度においても対照区と比較し、飼料用米給与区で数値が高くなる傾向が見られました。また卵黄色評価で飼料用米10%給与区では、
カラーファンスコアに対照区との違いはほぼ見受けられませんでしたが、飼料用米30%給与区ではカラーファンスコアが1・1低くなりました。
●将来の方向と課題
成鶏への飼料用米給与には配合割合10%程度であれば、栄養性や嗜好性に問題はなく、また、成鶏の産卵率や生産物への大きな影響は見られず、むしろハウユニットや卵殻強度に関しては対照区と同等かそれ以上の数値を示す傾向が見られました。さらに配合割合30%の場合も同様の傾向が見られましたが、卵黄色ではカラーファンスコアが低くな
る事が確認されました。
このことから、実際に養鶏農家が

利用する場合、配合10%程度であればそのままトウモロコシの代替が可能ですが、更に配合割合を大きくする場合、CP、MEの低下を補うための新たな添加飼料が必要となります。また、配合割合増大に伴い卵黄色の低下も懸念されるため、卵黄の品質に問題はない等、販売先への理解を求めたり、もしくは、卵黄色維持のためのパプリカやアルファルファ等の添加飼料を加えるといった工夫が必要となります。しかし、他県では、お米を食べさせて生産された畜産物であることを消費者に啓発することで高付加価値販売を実現している事例もあり、新たな経営展開の可能性もあります。
これからの展望としては、畜産農家からの豚ふんや鶏ふんなどの堆肥を利用した飼料用米生産の後、飼料として利用するという流れをつくり、地域環境に根ざした「耕畜連携による資源循環型農業」を行っていくことが期待されます。また、このことが、輸入飼料の価格変動に左右されない安定した経営の実現や消費者への安全・安心な畜産物を提供することにつながります。さらに、稲作・畜産両農家にとって、1t/10a超の収穫が可能な超多収獲米品種を利用する事で低コスト生産と休耕地利用に伴う所得の向上、前述した畜産物の高付加価値販売などが期待されます。
しかし、補償制度が終了した後も継続的に飼料用米を生産する担い手の確保や、流通・利用までのシステムの構築等の課題があります。
今後、当所では、より効率よく飼料用米を利用するために給与時期を更に早め、ヒナの餌付け段階からの飼養試験を実施する予定です。
(神奈川県畜産技術センター
畜産技術所 普及指導担当
前田高弘)
この記事の詳細は、神奈川県畜産技術センターHP
研究情報&技術情報

 | | 稲垣 靖子 | 湘南家畜保健衛生所所長 |
|  |
平成二十二年四月一日の定期人事異動で、県央家畜保健衛生所から、湘南家畜保健衛生所に異動しました。毎日、田んぼの向こうに広がる富士山の雄大な姿を眺めながら、元気に通勤しています。
さて、例年ならば暖かな日差しのなか蜜蜂のふそ病検査で新年度がはじまるところが、今年の四月は天候不順で検診も多く、慌ただしい日々が続きました。そこへ、四月二十日
「宮崎県で口蹄疫発生」の一報が入ってきました。
今回の口蹄疫は伝播力が非常に強く、一例目の発生から約一ヶ月が経過した時点で、感染は二市五町にわたっています。被害が拡大しているなか、五月十八日、宮崎県知事は「非常事態宣言」を発しました。家畜伝染病で「非常事態宣言」が出されるのは過去に例がなく、それだけ、発生地での深刻な状況が伝わってきます。
感染拡大のスピードがあまりに速く、現地での防疫活動が追いつかないこと、人や物流の広域化を考えると、もはや「対岸の火事」というわけではありません。
今、農場への侵入を未然に防ぐため最大限の努力が必要です。農場の部外者の立入は極力制限し、踏込消毒槽を設置すること、畜舎に入る際には作業着や長靴を交換し、車両や器具機材の消毒を徹底するようお願いします。
さて、当所は、昭和三十五年に中家畜保健衛生所としてスタートし、おかげさまで、今年で四十年目を迎えることができました。
湘南家畜保健衛生所、読んで字のごとく、家畜の健康を保ち、人と動物の生命をまもるところです。伝染病の予防だけでなく、農家の皆様の身近な相談相手となれるよう、職員一同努力してまいりますのでよろしくお願いします。

 | | 青木 稔 | 大野山乳牛育成牧場長 |
|  |
四月入牧のちび牛達も、畜舎飼いからいよいよ慣らし放牧へ移行しました。放牧地に放されたとたん、牛達は、列をなして斜面を一気に駆け下り駆け上り、跳びはねながら全身で喜びを表し、実にほほえましい光景です。これからは、もっと急な斜面へと移動しながら、足腰の強い大野山育ちの牛へと育ってゆきます。
さて、四月二十九日は恒例の大野山「山開き」がありました。地元の山北町観光協会の主催で毎年行われ、山北町長をはじめ、警察署や消
防署、県機関が出席し、山頂の竜集権現社で、神主さんが安全登山祈願等を行い、地元産物の即売・牛乳の無料配布・女性コーラスなどが行われ、例年数千人の来場者があります。今年は神奈川全国植樹祭のサテライト会場にも指定され、松沢知事による記念植樹も行われました。朝は雲一つないまっさらの快晴でしたが、あっという間に寒い雨が吹き付ける生憎の天候になってしまい、来場者も行き場を失って帰り支度を始めてしまう有様。しかし、神事が始まる頃には何とか治まり、知事の植樹のセレモニーでは快晴となり、会場にも活気が戻りほっとしたものです。ちなみに当日植樹した木は、山北にある天然記念物の樹齢二千年の箒(ほうき)杉(すぎ)の種子をスペースシャトルに乗せた宇宙帰りの「シャトル杉」の苗でした。
五月十三日には、ヘリコプターでの肥料散布を行いました。大野山は傾斜が三十度を超える面積が六割を超え、人力で肥料散布ができないため、ヘリコプターで散布する必要があります。この日は各方面から応援を得て、地元・電力会社への連絡も済ませ、積み込み手順・作業計画も準備万端でことにあたりました。例年は小型のヘリコプターで肥料積載量三〇〇kg程のものを使っていましたが、今年は積載量一トンという大型のものでした。ヘリへの積載方法も例年とがらりと方法を変え、シャベルローダーとトランスバックを使った機械化の新方式を採用しました。これでうまくいけば、午前中にも終わってしまい、午後は応援の人に何をやってもらおうかなどと、いらぬ心配もしていました。ところが、初めての大型ヘリであったので、思わぬところで手間取り、さらに小回りがきかないなど効率が悪く、想定以上に時間がかかり、終了したのは午後三時近くになってしまいました。事故もなく、肥料散布を無事完了いたしました。農業用ヘリも近年は効率優先で大型のものしかないので、来年以降は手法を改善してゆくつもりです。
